マスターリズム譜とはコードやリズムのキメなどが乗った最低限の楽譜で、曲のメロディを弾かないギターやピアノ、ドラム、ベースなどのリズム楽器で使用されます。
細かいフレーズの指示が記載されておらず、演奏の大部分を演奏者自身に任せられるため技量やセンスが問われる一方でより個性が際立つのでアンサンブルがより面白いものになります。
マスターリズム譜はレコーディングなどのプロの現場で使用されるほか、セッションなどでも使用されます。非常にシンプルでありながらわかりやすいので、読み方はもちろん、自分でも書けるようになっておくと自分のバンドなどで楽譜を作る際に便利です。
ここでは私流のマスターリズム譜の作成方法を紹介してみます。
目次
最初に 書き方は人それぞれ?見やすい楽譜を心がけよう
書き方の説明をする前に一言前置きをしておくと、マスターリズム譜は大部分は書き方は決まっていますが、細かい部分は楽譜を書く人によって表記方法が違かったりします。
コードやリズムなどの表記方法などはご存じのようにあらゆる楽譜で記載されているように書いていきますが、マスターリズム譜はその他に楽譜が見やすくなるような工夫としてコメントを入れたり、見やすいように段落を分けたりなどすることがあります。この部分で作成者ごとに流儀が異なるのです。
書き方はことなっても「演奏者にとって見やすい楽譜」を目指していることは共通しています。見やすさ重視で気の利いた楽譜にしていく心遣いが大切ですので、他の人が作った楽譜をみてよいところはどんどん真似してみましょう。
STEP1 曲の構成ごとに小節数を数える
それでは実際にマスターリズム譜の作成方法について、手順を追って説明したいと思います。
ここではあいみょんの「マリーゴールド」を参考に譜面を起こしていきます。
譜面を起こす最初のステップは曲の構成を把握することです。
構成とはAメロ、Bメロ、サビといった各パートのことで、これらの流れとそれぞれが何小節づつあるのかを最初に把握します。
小節を数えるには実際に曲を流しながらカウントしていくほかありません。何度も聞き返しながら紙にメモするなどして数えます。
(↓実際のメモです。きたなくてすみません。)
INT 9小節
A1 8小節
A2 8小節
B1 4小節
C1 16小節
間奏 2小節
A3 8小節
B2 4小節
C3 16小節
D 8小節
ソロ 7小節
C3 24小節
END 15小節
最初は難しいかもしれませんが、すでに知ってる曲など慣れてくると曲のパターンがなんとなく見えてくるので先の展開を予想しながら進められますし、同時並行でこの後説明するキメやリズムなどのメモもとれるので楽譜作成自体は思いのほか時間がかからないことが多いです。
STEP2 リピート記号などで楽譜をコンパクトにまとめる
ここから五線譜を使って譜面にしていきます。ここでは楽譜作成ソフトを使用していますがもちろん手書きでも構いません。
先ほどカウントした全ての小節をそのまま楽譜にすると楽譜が無駄に多く、かさばったり読みにくくなってしまいます。
マスターリズム譜はA4用紙1~2枚に収まるくらいが使い勝手が良く好まれます。
上の楽譜はリピート記号を使用していない素の状態です。楽譜が4枚になってしまい実際の演奏で見ながら弾くには大変ですよね。譜面台に全部は広げられないので演奏中に楽譜をめくったりする必要がありとても不親切です。
ここで、多くの曲はAメロ、Bメロなど同じ演奏を繰り返しますので、リピート記号を上手く使いながら楽譜をコンパクトにまとめていく作業を行います。
何度も繰り返されるところは出来るだけ共通化し、出口を1カッコ、2カッコ等で分けます。またダルセーニョやコーダ記号を使って曲を誘導していきます。
楽譜をまとめて4枚から3枚にすることができました。
できれば2枚に収めたかったところですが、これ以上は譜面が見にくくなってしまいそうです。
ダルセーニョとコーダを使用してC3メロをC1,2メロと統合してあげればもう少し縮めることはできますが、あまり楽譜のあちこちに飛んでばかりでもかえって不親切ですので、見やすさとコンパクトさのバランスをとってまとめましょう。
ちなみに6段目の2カッコ手前の2小節など、不要な小節は斜線や波線で消しておくと見やすくなります。次に演奏するところが譜面上で飛び過ぎないようにするための一工夫です。
STEP3 コードを記入する
いよいよ楽譜にコードを入れていきます。
耳コピでも良いですが、メジャーな曲ならばネット上でコード譜が掲載されているサイトがありますのでそちらを見るのでも良いと思います。chordwikiや楽器.meあたりが掲載量もおおくオススメです。
ここではchordwikiを参考にしてみました。
だいぶ楽譜らしくなってきました。
もしもコードを記入する段階で、例えばAメロの1回目と2回目で微妙にコード進行が違うなどが分かった場合は段落を分けるなどして修正をします。ほんのちょっと簡単な違いでしたら余白などにメモするなどもアリです。ここも演奏者が困らない程度かどうかで判断しましょう。
STEP4 キメなどの特徴的なリズムを入れる
キメというのは曲中にみんなでリズムを合わせる箇所のことです。
マスターリズム譜は多くを演奏者にお任せしている楽譜ですが、曲中で「ここはみんなで合わせたい」という箇所は特別にリズムやメロを入れて指示することがあります。
マリーゴールドではイントロの7小節目、F♯m7のところや、Dメロの4小節目などにキメがありますので、これを入れていきましょう。
Bメロが2回目にしかないキメがありましたので、B2という記号とともに()書きでリズムを入れました。段落を分けてもよいですがこの程度ならば()書きでも十分だと思います。
また<break>とはみんな一斉に音を止める部分のことです。ギターだけ鳴っていたり、ボーカルだけ歌っていたり色々なパターンがありますが、ドラムとベースがぱったり消えたらそこはブレイクとみてよいでしょう。
STEP5 コメントなど特記事項を入れる
最後に、特別指示したり、演奏者に知っておいて欲しいことなどを余白などにコメントを入れます。
いろいろなパターンがありますが、多いのは先ほどのブレイク<break>や、逆にイントロなどからバンドが入るところ<band in>、曲中にボーカルやギターだけになるところ<only Vo>や<only Gt>などでしょうか。ちなみにこれらは私の書き方で、人によって書き方が様々です。
用語化していたりよく使う英語はそのままの方がわかりやすいです。
日本語で「ここはおとなしく」、「ここから盛り上げる」などのコメントもありです。音楽記号でも構いません。内容もスケールを指定したり、フィールを指定したりと色々と記入できることがあります。
これでマスターリズム譜の完成です。
実際に譜面を作成ことで楽曲の構成や細かいリズムなどを理解することができるので、少々面倒くさくても譜面を起こすようにすると曲の覚えが断然早いです。
楽譜の書き方を知っておくとバンドでアレンジしたい場合にも対応ができるので何かと便利ですし、バンドでマスターリズム譜をもっていると急きょサポートで違うメンバーに入ってもらうときなどにもスムーズです。
最後に マスターリズム譜の作成のオススメソフト
私は譜面作成にClover Chord Systemsというソフトを使用しています。
こちらのソフトはマスターリズム譜の作成に特化しており、非常にシンプルながら楽譜作成がスムーズに行えます。今回の楽譜くらいならば10分くらいで書きあがります。
楽譜はソフトで作ると手直しやアレンジの際に簡単にできるので非常に便利です。まだ楽譜作成ソフトをお持ちでないかたにはオススメです。