5弦ベースといえば低いほうに1弦追加されたLow-B仕様が一般的ですが、高い方に1弦追加したHigh-C仕様というものも存在します。
重低音のLow-Bに対してHigh-Cはキラキラときらびやかなサウンドは、とくにソロやコード弾きをするときに威力を発揮します。
どちらの仕様も良し悪しがあり好みが分かれるところですが、5弦ベースを持っているならば一度はHigh-Cを試してみたいと思うもの。
B弦を取ってしまい残った弦を低い方にひとつずつずらしてやればHigh-C弦を張れるような気もしますが、ほんとにそんな上手くいくか?と心配ですよね。
今回、私の手持ちの5弦ベースにHigh-C弦を張ってみたところ上手くいったので一例としてご紹介。
お使いのベースの仕様によってリスクに差がありそうなのでぜひご参考に。
目次
Low-Bの5弦ベースにHigh-Cを張ることはできるか
ナット溝の問題
ナットの溝は弦の太さに合わせて作られており、高音側弦はナット溝も細く、低音側は太くといった具合になっています。
high-C弦を張ることにより弦を一つずつ低い方へ移動する場合、もともとの太い弦に変わって細い弦が張られることになります。幸いにも弦が溝に入らないことはないですが、弦に対してナット溝が太くなってしまいます。
ナット溝が太くなってしまうことで発生する問題点はいくつか考えられます。
できればHigh-C仕様に合わせてナットも変更するのが理想です。しかしちょっとお試しくらいの気持ちでナットまで変えるのは非常に面倒臭いです。
元々のセッティング具合によっては何も問題のない可能性もありますが、こういった問題が起こりうることは想定しておくべきでしょう。
ゼロフレット仕様ならば弦高の問題はない?
通常のベースは解放状態のときナットとブリッジで弦を支えています。開放弦を鳴らすときはナットによって音程がキープされており、言わばナットをゼロフレットと捉えることが出来ます。
少々珍しい仕様ですが、ナットではなく通常の金属フレットを用いてゼロフレットを打ってあるベースが存在します。こちらは金属のゼロフレットとブリッジで弦が支えられることになります。
ゼロフレット仕様のベースの場合、ナットは弦の横方向のみを支えており弦高方向には作用しません。そのため弦をずらしたとしても弦高方向が大きく狂う心配はないはずです。
ゼロフレットは本来、解放時と押さえ時の音色やダイナミクスの差を解決するためのものですが、何かと調整の難しいナットの問題も解決してくれる地味だけど役に立つナイスなオプションです。
ロングスケールならピッチのずれも気にならない?
ピッチのずれは、弦を押さえたときにナットの溝の中で弦が動いてしまうことを懸念しています。
弦を押さえたときにナット溝の中で弦が動いてしまってはピッチも安定しません。
どの程度動けば体感できるほどの影響があるのかわかりませんが、色々な面での弾きやすさを考えたときに弦はきっかり固定されているほうが良いはずです。
これには弦のテンションも影響してきます。
テンションがふにゃふにゃでは簡単に弦が動いてしまいますし、ピンと張っていれば多少の力では動くこともないでしょう。
そこで、流通している5弦ベースの多くが35インチのロングスケールであり、4弦などの32~34インチと比べて弦のテンションが強い傾向があります。
テンションが強い分横方向へのずれも起こりにくくなるはずなので、35インチのロングスケールならば比較的影響が少ないと想定されます。
ネック反りの問題
弦の太さが変わるとテンションも変わってきますので、ネックにかかる負荷が変化し反ってしまうことが考えられます。
Low-BからHigh-Cに変えることでテンションが強くなるため、ネックへの負荷が大きくなり順反りしてしまうことが予想されます。
お試しで短い期間だけならば問題ないかもしれませんが、本格的にHigh-C仕様に切り替える場合はネックの調整ありきで見ておくべきです。
実際にHigh-C弦を張ってみた
弦高その他は問題なし
実際に手元のLow-BベースにHigh-C弦を張ってみました。
こちらのベースは35インチスケール、ゼロフレット仕様とHigh-C仕様にするにはもってこいです。
やり方はB弦を外して残った弦を一つずつ低い方に移動、最後にC弦を追加です。C弦だけ購入すれば残りは再利用できるので経済的にもグッド。
ナットの溝に対して弦が細く、隙間が出来ていることがわかります。
横方向へのずれについてはほぼありません。やはりスケールが長く弦のテンションが十分に稼げているためか、普通に弾いている程度でずれることはなくピッチのフレもきになりません。
またペグの配置上、ナットに対してナナメに弦が入っておりナット溝の片側に押し付けられている状態になっているのも弦がずれにくい要因の一つのようです。
ちょっと見にくいですが、弦がナットの溝にハマりきっておらず下に隙間が空いています。
ナットではなくゼロフレットで支えているため隙間が空いていても問題なく、弦をずらしてもブリッジ側で弦高を調整してあげればほとんど違和感ないです。
ネックが順反りした
弦を張り替えた当初こそストレートのままでしたが、数カ月経過したところ予想通り若干順反りしました。
弦を変えたことによるテンションの変化のため仕方ありません。トラスロッドを調整してとりあえず様子見です。
気温や湿度の変化なども含めて長期的に様子をみながら落ち着いてくれることを願うのみです。
Low-Bの5弦にHigh-C弦を張ることができた
ネックの反りの問題はありましたが、おおよそ問題なくC弦を張ることができました。
C弦ならではのきらびやかなサウンドが気持ちいい。
コード弾きは4弦、3弦ルートでもテンションノートまでしっかり響かせられるのでコードワークにバリエーションが増えていい感じです。
ソロを取るときも1弦増えるだけで同じポジションでもフレーズの息の長さがグッと伸びて、あとちょっと弾いている間に次の展開を考えたりと余裕が出た気がします。
ただ他の楽器の音域と被ることが多いので、特にバッキングなどアンサンブルの中ではあまり使いどころがないかも。
ここぞ!という場面や使いどころを準備してあげた方がやりやすそうです。
どちらが良いかは好みでしかありませんが、私はLow-Bよりも好き。演奏が面白くなりました。
しかし同時にルートを支える本来の役割上は不要で、High-Cが普及しない理由が分かった気もします。
まとめ
Low-B仕様の5弦ベースにHigh-C弦を張ることが出来るかについて、実践を交えて検討してみたところ35インチ、ゼロフレット仕様においておおよそ問題なく張ることができました。
今回の実践環境は一例なので、それぞれお持ちのベースでどのように影響するかは実際にやってみないとわからないことが多いと思います。
とりあえずC弦を張ってみるだけならば簡単にできるので、まずはぜひお試しを。